救急外来に思う


救急とかけて9×9と説く,その心は「苦苦」

今日の救急外来はまさに「総合診療科」と名付けたほうがいい外来でした。これを「救急」という国民は誰が教育するのでしょうか。まさか,救急外来担当医師が受診患者一人一人に「こういうのはね,救急とは...」と説教垂れるわけにはいかないでしょう。

じゅうたん2枚敷いた床の上に1歳未満の子供が転倒して後頭部を打ったといって,救急車に乗って現れ右往左往している若いお母さんには,こちらも口を開けているだけです(一応,小児科の先生といっしょに診て,ちゃんと説明してやりました。
預かった赤ん坊のかぜ薬が切れたので,少し長めに出してほしいと1週間分のかぜ薬をもらいに来たおじいちゃんおばあちゃんには何と言えばいいのでしょう。「あんたらが親の時も子供にそんなことしたんかい!」なんてことは,敬老精神旺盛な私にはとても言えません。
風邪ひいて頭が痛いので頭痛薬下さい,と来た若い心身症の人に「その辺の薬局でバファリンでも買って飲みなさい!」なんて,心優しい私には言えません。

一人の医師としての非力を感じます。

救急外来の医療費を値上げすべし。7割負担。救急車利用は9割負担。
それでも来る人こそが,本当の救急患者です!
診療費の値上げが望ましいとは思いません。でも,そうでもしないと,国民皆保険の2割医療費(今はようやく3割)に慣れた国民が「救急医療」というのを理解するとは思いません。
それをやってはじめて,救急とはなんぞや,救急担当医とは何ぞや(救急車とは何ぞや)が理解でき,通院先や地域の病院が,そして日本の医療がどのようにすれば良くなるのか,という議論に入れるのではないかと思います。
ドラマ『ER』を感動しなくてもいいので,あれが救急の現場なんだと,悟って欲しいものです。

(そんなことすると,本当の救急患者さえもなかなか病院に行かなくなる,というジレンマが出てくるでしょうが...)

Posted: 土 - 1月 3, 2004 at 10:20 åflå„           たこ部屋


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