検査室「そろそろ争論」

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パーソナリティの重要性

●「我が儘」と同意ではない
 前回のコラムでの主張がやや誤解された感があります。
 組織には当然規律が必要であるし,それがなければ個人個人が好き勝手にやってしまい,組織としての統一性が保てません。
 組織の一員なら,組織の最終決定には従うべきです。その最終決定を決断するのは組織の長であり,よって,組織の長はその決定にすべての責任を負わねばなりません(だから,リーダーというのは孤独なのです)。その決定に従うことができなければ,組織から身を引くしかありません。
 私が言わんとしたことは,組織を崩壊させる狭量の「我が儘」(こういうのを個人主義とは決して言わない)の奨励ではなく,組織の構成員である個人の自立とそれを尊重する組織であることが今後とても重要である,ということです。

●パーソナルとは「自分の頭で考える人のこと」
 では,「お前がいう個人の自立とは何だ?」という問いに,いい回答の表現が出てこないため困っていると,ちゃんと答えている人がいました。Mandal-Art.com の今泉浩明氏で,パーソナリティとは「自分の頭で考え始める」ことから形成されるもの,と説いています。
 目から鱗。私が最も言わんとすることが的確に表現されています。そう,自分の頭で考える,それが今の時代に必要なことなのです。今までは組織(つまり,組織の上層部)が考えたことがその組織の構成員の考えと捉えられていたし,そう思いこんでいました。つまり,自分で考えなくとも,組織が考えてくれたことをやっていれば何も問題は起こらずに済んだのです。
 しかし,この乱世の時代,一人一人が「自分の頭で」考えなければ対応できなくなってきました。組織とはこれでいいのか,家族は,学校は,社会は,世界はこれでいいのか。私の,あなたの,彼・彼女の考えはどうなのか。私は私の,あなたはあなたの,彼・彼女は彼・彼女の意見を持ち,それを表明できなければダメな時代なのです。
 今泉氏は,この[私が私であり][あなたが あなたである]ことを[パーソナル]という,「あなたはどう考えますか?」「あなたの意見はどうですか?」「あなたの好みは何ですか?」というように[あなたの]という幾多の問いに[あなたの]答えを出すことによってのみ形成されるものが[パーソナル]だと思う,と喝破しています。私のいう「個人の自立」をとてもわかりやすく表現してくれていると思います。

●「個人のことを考えてやっている」という常套句
 これまでは,皆と同じであることが当然視されてきました。同じ目的や趣向を持った人の集団(組織)がその典型でしょうか。会社,同好会,そして専門家集団(学会や大学医局を含む)。しかし,本当にその一人一人の目的や趣向は同じなのでしょうか。
 組織が用いる常套句に「組織は個人個人のことをよく考えてやっている」というものがあります。確かにそうかもしれませんし,実際,そうやってきた親切なところもあることも承知しています。でも,本当にそれでよいのでしょうか。それは個人を他の個人と同格に,つまり平等に見ることで成り立つ論理のはずです。要するに,各個人が同列であることを前提にしているのです。例えば,同期生。
 私とあなたとは同期生だから同じ(扱い)でしょうか。扱いが異なってはいけないのでしょうか。異なるのは不平等でしょうか? やりたいことが異なるのに? 異なることはいけないこと? それって,本当に個人のことが考慮されている(観ている)のでしょうか。組織が音頭を取って,子離れできない母親のように,個人の面倒をみていく時代は終わりを告げています。

●パーソナルを観よう,聴こう
 人それぞれに,考えることは異なります。同期生であっても,同じ境遇にあっても,そして同じ映画を見,同じ本を読んでも,人それぞれに見解や感想は異なるはずです。それがパーソナルです。
 個人においては,パーソナリティを確立する*ことがとても重要。組織においては,構成員個々のパーソナルを観る,聴く(「見る」「聞く」ではない)ことが重要です。それができる個人と組織が生き残っていくのです。
 そういうことで組織は保たれるのか? 私の答えはイエス。パーソナルの強い組織にこそ,発展があります。今,活気のある組織をみてください。一人一人のパーソナリティ(個性ともいう)が強いとは思いませんか。個々のパーソナルを解放しながら個々を束ねる。そういう逆説的な器量と技術が組織やリーダーに求められているのです。逆に言えば,組織やリーダーもパーソナリティを持たねばならないのです。パーソナリティの確立した人*は,パーソナルの強い組織やリーダーの下に集結していくのです。そのような組織では,個人は個々の持つ目的を達成できるし,組織もまた,個人のパーソナリティを駆使して組織としての目的を達成していくことができるようになるのです。

*パーソナリティの確立した人:自分の意見を持ちながらも,他人の意見や反論に耳を傾け(他のパーソナリティを尊重できる),自らの不備な点を修正できる柔軟性を持つ人のこと。自らの発展・成長を更に目指している人のこと。決して,自分の主義主張に依怙地になる(自らを自分の言葉で縛りつけ,発展や成長をやめる)人のことではない。 <自戒!>

(平成15年2月16日)


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