仕事考

1.情報の整理

 1)整理すべきはアウトプットに役立つ情報

どの情報整理に関する本にも書かれていることだが,「アウトプットに役立たなければ,情報とは言えない」ということだ。私の立場でいえば,いくら新しい医学情報を得ても,それが実際の臨床現場や学会発表,論文発表に役立たなければ,意味がない情報なのだ。

よくあることだが,目の前を通った情報(論文など)がいつかは役に立つかもしれない,とせっせと収集したり,パソコン上でデータベースを作って管理したりする。私も何度となく経験済みだ。それに意味がないとは言わない。でも「いつかは…」と思って集めたことが,本当に役だったことはない。役立つ情報は,必要なときに集めたものばかりだ。患者の診断や治療に困ったとき,集めた文献や情報。原稿を書かねばならないときに集めた資料。本当に役立っているのはこういった情報だけだ。つまり,情報を求める方が主体的になり,自分の都合に合わせて集め,整理したときに,初めて生きた情報となっていくのだ。何らかのアウトプットに役立つ情報,それを活用し,整理していくことが重要なのである。

(平成14年5月30日)

 2)インターネット上の情報はすべて役立つか? 〜アウトプットに応じた情報入手と整理〜

医学関係の論文の検索する際によく利用されるのが "PubMed" という検索サイトだ。なるほど,使ってみるとかなり便利だ。だが,ここで検索された論文すべてが自分の目的に有用かというと決してそういうことはない。キーワード検索で掛かってくる論文の数はかなり多い。これを全部ダウンロードあるいは取り寄せていたら,先に書いたように,論文収集という手段が目的になりかねない。数多くの論文の中から,そこに掲載されている abstract をざっと読み流し,自分に本当に必要な論文(情報)を引っ張ってこなければならないのだ。

どんな論文(情報)が役立つ情報なのか。それを見分けるコツは,自分で何度もその作業を経験して得ていくしかない。残念ながら,そのための簡単な方法はないのだ。

さらに,問題なのは,集めた論文(情報)を整理することが難しいということだ。整理法に王道はない。自分のスタイルやアウトプットのテーマに合わせて,分類し,整理するしかないように思う。私の現在の整理法は,アウトプット(学会発表,論文,原稿,患者の診断や治療に必要なもの)のテーマに応じて行っている。というより,レターケースや紙袋の中にぶち込んでいると言ったほうが正確かもしれない。整理法の本は参考にはなるが,それが自分のスタイルにマッチするか否かは,やってみなければわからないのだ。いろいろな整理法の本を読み,それをすべて試した私でさえ,こればかりは今も試行錯誤の毎日なのである。

(平成14年6月17日)