図書室(一般書)

2000年12月4日 

英語は格闘技だ―武蔵が英語に挑戦すれば』(ちくま新書) 松本道弘
 筑摩書房 2000.9.20 206ページ ¥660(税別) ISBN4-480-05862-1
 実用会話では相手と場合に応じて重い英語,軽い英語を使い分けなくてはならない。それは武道における技の使い分けや刀の使い分けに通じる。英語をコミニュケーション・ツールとして使いこなすには,英単語だけではなくTPOに応じた戦術・戦略を身につけなければならない。

最初で断っておくと,「普通の」英語学習法を期待している人には「不向きな」本。英語だけ知っていても,この著者の話に付いていくことはできません。それだけは,覚悟して読むことです。逆に言えば,英語以外の多岐にわたるバックグランド(専門でも興味でも構わない)があれば,英語を知らなくとも話に付いていけます。

私が20歳の時に出会った1冊の本が,松本道弘氏の『速読の英語』。それが私の心を打った!今の私があるのも,その本とその後に続く一連の作品のおかげ,と言っても過言ではありません。還暦を迎えた松本氏の最新作。

2000年11月27日

菌に薬が効かなくなるという耐性菌についての本を2つ紹介しましょう。医学関係者には,特にお勧めです。

薬はなぜ効かなくなるか―病原菌は進化する』(中公新書) 橋本一著
 中央公論新社 2000.4.25 253ページ ¥800(税別) ISBN4-12-101528-2
 ヒトは、長く感染症対策に苦しんできたが、十九世紀後半の細菌学の発展を背景にしてサルファ剤が生まれ、さらにペニシリンが開発されるに及んで、ついに、人体内で微生物のみを死に至らしめる抗菌薬を手に入れた。このときから、菌は薬への耐性を獲得し、ヒトはその耐性菌を殺す薬を作る、とい うイタチごっこが始まったのである。本書は、病原菌の適応進化のしくみを知り、抗菌薬のゆくえを考える手引きとなるだろう。
【目次】
第1章 抗菌薬はどのように世に出てきたか?
第2章 耐性菌の出かた
第3章 薬剤耐性の仕組み
第4章 バクテリアにもオスとメスがある―水平遺伝
第5章 菌自身の変わり方
第6章 効かない菌への対応策;終章常に慰め、時に癒す

薬が効かない―ヒトと感染症のたたかい』 中島祥吉(元明治製菓株式会社薬剤研究所長・東洋公衆衛生学院非常勤講師)著
 丸善,本体1,400円 四六判 256頁 ISBN 4-621-04776-0
 近年、結核、ペスト、O157、エイズ、マラリアなど「再興・新興感染症」が深刻な問題となっている。感染症とそれに対する薬(抗生剤)の開発の歴史をふりかえると、強い毒性、副作用、耐性菌の問題を克服し、一時は「感染症は過去の疾患」とされるにいたった。しかし、近年、すでに克服したと考えられていた感染症や新しい感染症が、世界中で猛威をふるっている。そして、その治療薬が効かなくなっている。 本書では、その現状をみつめなおし、抗生剤を乱用し抗生剤が効かない病原菌が発生したのはなぜか、その原因を考える。 また、今後の感染症と人類とのかかわり方をとらえなおし、感染症対策の新しい道を探る。 結核、ペスト、O157、エイズ、マラリアなど「再興・新興感染症」が深刻な問題となっているが、耐性菌の出現などにより薬が効かなくなっている。今後の感染症と人類とのかかわり方をとらえなおし、抗生剤開発の問題点を示し、感染症対策の新しい道を探る。
【目次】
第1章 抗生剤が効かない
第2章 新たなる脅威、新興・再興感染症
第3章 病原微生物について知る…感染症の原因追及
第4章 「魔法の弾丸」が梅毒を克服する…初めての抗生剤の開発
第5章 毒性が弱い薬はないか…細菌に効く薬を求める
第6章 副作用・耐性菌とのたたかい…ペニシリン、セファロスポリンの開発
第7章 結核とのたたかいと新抗生物質開発ラッシュ
第8章 抗生剤の未来…二十一世紀の「魔法の弾丸」